Symposium 2025@Waseda University
タイトル(仮):日本の国語教育における論理的思考系のカリキュラム導入とあるべき国の国語教育政策の提案に関するシンポジウム
予定開催日:2025年6月7日
予定会場: 早稲田大学キャンパス内施設
参加費: 未定
*以下、下線部分は未決定部分
協賛団体:明治大学 法と社会科学研究所、早稲田大学文学学術院・文学部心理学コース 臨床法教育学会
独立法人大学改革支援・学位授与機構
臨床法教育学会
開催責任者:福澤一吉、言語病理学Ph.D、明治大学法と社会科学研究所客員研究員、早稲田大学名誉教授
戸田山和久、独立行政法人・大学改革支援・学位授与機構教授兼研究開発部長 2023年3月まで名古屋大学教授
シンポジウムの目的
シンポジウムの目的は日本の国語教育における論理的思考系の本格的カリキュラム導入の提案と、国の国語教育政策の失敗を整理すると同時に、あるべき国の教育政策を具体的に提案することである。このシンポジウムをもとにして論理的思考教育に関する教科書の出版もスコープに入れている。シンポジウムの対象は文科省をはじめとする教育関係者、法曹関係者、医療関係者、マスコミ関係者、一般企業関係者である。
シンポジウム開催に至る経緯と現状の整理
主催者・総合統括(福澤)は早稲田大学文学部心理学コースをはじめとする様々な教育場面において30年余りにわたり非形式論理学(論理的思考*)にまつわる教育をしてきた。それは学生が具体的な学問的コンテンツを学習する前段階において基礎的論理教育が不可欠であるとの認知に立脚しているものである。その個人的経験からの判断ではあるが、日本では初頭教育から大学院教育まで、一部を除き、フォーマルな議論・論証、論理的思考、論理的な読み書き等々についての基礎トレーニングは殆ど行われていない。例えば、学部に入学してくる学生の議論能力や文章を書く能力も惨憺たるものである。このような現場での実体験から、これらの問題を見過ごすことのできないと長年強く感じてきた。同時に、これは一重に教育する側の能力不足と怠慢さに起因するものであり、教育する側の問題であると痛感している。
この現状の元に、日本人は一般に、読み書き、議論などに関する論理的思考の基礎教育を受けないまま社会人になり、自我流で拙い議論をし、自我流で書いている。国会議員の議論のレベルの低さ、ジャーナリストの質問能力や報道関係者の解説能力の低さは際立っている。ここに大学教員も含めておく。フォーマルなやりとりができなくても、論理的思考ができなくても、何とかなっている現状に甘んじるのではなく、論理を背景とするフォーマルな議論ができる日本人の要請は急務であろう。解決に一歩踏み出したい。
シンポジウムの内容とスピーカー
今回のシンポジウムの各スピーカーはそれぞれ専門分野を有する。一方、それと合わせて大学学部の基礎教育に関しても影響力のある教育、著作活動をしてきた。それらに共通するキーワードは教育、論理学、非形式論理学(論理的思考*、議論、論証)、クリティカル・シンキングなどである。今回、各スピーカーから日本における義務教育特に国語教育の抜本的な見直し案を含めて、考えるところをお話しいただく。合わせて、日本における教育と欧米での教育比較にも触れていきたい.
シンポジウムで検討したいトピック案(順不同)
日本における議論の実態(主に福澤が報告予定)
日本のメディアの議論能力、マスコミと解説能力、国会議員の議論能力
政治家、ジャーナリスト、弁護士、大学教員、医師等々
小学校から大学院までにおける読み書き教育の実態
文科省主導の論理国語の導入とその現状
日本の国語系の政策問題
アメリカにおけるwritingの教育(Prof. Le Tendre)
実態を受けての今後への提案(各スピーカーからの提言。提言内容)
*論理が思考に先行すると誤解されているが、思考する際には思いつきで思考し、それを後向きに整える時に論理が作用する。その意味で論理が登場するのは思考の後である。
スピーカー(アイウエオ順)
苅谷剛彦(オックスフォード大学社会科学科、現代日本研究所教授、東京大学名誉教授、2023年紫綬褒章受賞)フロアー参加
東京都出身。東京大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科修士課程修了。ノースウェスタン大学大学院博士課程修了。Ph.D(社会学)。東京大学教育学研究科教授などを経て、2008年より現職。専門は、現代日本社会論、教育社会学。
著書:『学校・職業・選抜の社会学――高卒就職の日本的メカニズム』(東京大学出版会 1991年)『アメリカの大学・ニッポンの大学――TA・シラバス・授業評価』(玉川大学出版部 1992年)、改訂版:中公新書ラクレ、2012年『大衆教育社会のゆくえ――学歴主義と平等神話の戦後史』(中公新書 1995年)『知的複眼思考法』(講談社 1996年)。「同-誰でも持っている思考のスイッチ」講談社+α文庫 2002年『変わるニッポンの大学――改革か迷走か』(玉川大学出版部 1998年)『学校って何だろう』(講談社 1998年/ちくま文庫 2005年)、 ISBN 9784480421579『階層化日本と教育危機――不平等再生産から意欲格差社会』(有信堂高文社 2001年)『教育改革の幻想』(ちくま新書 2002年)『なぜ教育論争は不毛なのか――学力論争を超えて』(中公新書ラクレ 2003年)『教育の世紀――学び、教える思想』(弘文堂 2004年)、増補版:ちくま学芸文庫、2014年『学力と階層 教育の綻びをどう修正するか』(朝日新聞出版 2008年/朝日文庫、2012年)『教育と平等‐大衆教育社会はいかに生成したか』(中公新書 2009年)、『イギリスの大学・ニッポンの大学 カレッジ、チュートリアル、エリート教育』(中公新書ラクレ 2012年) 『オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論』(中公新書ラクレ 2017年)『追いついた近代消えた近代 戦後日本の自己像と教育』(岩波書店 2019年)『コロナ後の教育へ-オックスフォードからの提唱』(中公新書ラクレ 2020年)『教育と平等』『大衆教育社会のゆくえ』(いずれも中公新書)『知的複眼思考法』(講談社)はクリティカル・シンキングが学術的活動にいかに重要であるかを分かりやすく解説している名著である。
下條信輔(カリフォルニア工科大学教授、知覚心理学、脳科学)
東京大学文学部心理学科卒、同大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学助教授などを経て、現在カリフォルニア工科大学教授。専門は知覚心理学、認知脳科学、認知発達学。1999年 サントリー学芸賞、 2004年 日本神経科学会時実記念賞、 2008年 日本認知科学会独創賞、2009年 中山賞大賞受賞。
著書:『まなざしの誕生 赤ちゃん学革命』新曜社、1989、『視覚の冒険: イリュージョンから認知科学へ』産業図書、1995、『サブリミナル・マインド: 潜在的人間観のゆくえ』中公新書、1996、『「意識」とは何だろうか 脳の来歴、知覚の錯誤』講談社現代新書、1999、『サブリミナル・インパクト 情動と潜在認知の現代』ちくま新書、2008、『ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知』日本評論社、2017、『まなざしの誕生』(新曜社)、『<意識>とは何だろうか』(講談社現代新書)、『サブリミナル・マインド』(中公新書)、『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)など、訳書にリベット『マインド・タイム』(岩波書店)などがある。長年、アカデミックなフィールドと現実社会を結びつるける活動を行ってきている。
戸田山和久(独立行政法人・大学改革支援・学位授与機構、元名古屋大学教授、科学哲学)
東京大学教養学部理科Ⅱ類を経て、1982年、東京大学文学部哲学科卒業。1989年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。1989年7月、名古屋大学教養部講師に就任。同大情報文化学部助教授、名古屋大学大学院情報科学研究科教授を経て、2017年より名古屋大学大学院情報学研究科教授、ならびに名古屋大学教養教育院院長。2023年3月退職[6][3]。2023年4月より、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構教授兼研究開発部長。
著書『論理学をつくる』名古屋大学出版会、2000年『知識の哲学』産業図書〈哲学教科書シリーズ〉、2002年6月『論文の教室 : レポートから卒論まで』日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2002年11月。『〔最新版〕論文の教室 : レポートから卒論まで』(最新版)〈NHKブックス〉、2022年『科学哲学の冒険 : サイエンスの目的と方法をさぐる』NHK出版〈NHKブックス〉、2005年1月『「科学的思考」のレッスン : 学校で教えてくれないサイエンス』NHK出版〈NHK出版新書〉、『哲学入門』筑摩書房〈ちくま新書〉、2014年3月5日。『教養の書』筑摩書房、2020年2月27日。『思考の教室 : じょうずに考えるレッスン』NHK出版、2020年1『レイ・ブラッドベリ『華氏451度』 2021年: 本が燃やされる社会』NHK出版〈NHKテキスト: 100分de名著〉、2021年。著書「論文の教室」(NHKブックス)は論文を書くとはどういうことか全く知らない学部生をアカデミックな世界で「書くこと」とは何を意味するかを理解し、運用できるところまで丁寧に導いている。「科学哲学の冒険」(NHKブックス)は分野を問わず学部学生なら必須の科学哲学の入門書である。
成田悠輔(エール大学経済学部准教授、東京大学招聘研究員、半熟仮想株式会社代表取締役)
ダボス会議(世界経済フォーラム)2023年度ヤング・グローバル・リーダーの一人。専門はデータ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと、公共政策の創造とデザイン。2011年に東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。東京大学大学院在学中にVCASI研究助手。ヂンチ株式会社代表、一橋大学特任准教授、スタンフォード大学客員助教などを歴任。2016年、マサチューセッツ工科大学(MIT)Ph.D.取得。同年にイェール大学経済学部アシスタント・プロフェッサー就任。独立行政法人経済産業研究所(RIETI)客員研究員。ZOZO、サイバーエージェントなどの組織と、共同研究や事業に携わる[2東京大学経済学部の最優秀卒業論文の中から数年に一度授与される「大内兵衛賞」内閣総理大臣賞・オープンイノベーション大賞、MITテクノロジーレビューInnovators under 35 Japan・KDDI Foundation Award貢献賞、第8回World OMOSIROI Award(ナレッジキャピタル主催)『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(2022/07/07、SBクリエイティブSB新書)はベストセラーである。
野矢茂樹(立正大学文学部哲学科教授、東京大学名誉教授、哲学・論理学)
1954年東京都生まれ、東京大学理科一類に入学。1978年、東京大学教養学部教養学科基礎科学・科学哲学分科卒業。1985年、東京大学大学院理学系研究科科学基礎論専門課程博士課程単位取得退学。東京大学では大森荘蔵に師事する。1987年、北海道大学文学部助教授。1990年、東京大学教養学部助教授1996年、大学院重点化により東京大学大学院総合文化研究科助教授。1999年、東京大学大学院総合文化研究科教授[4]。2017年、『心という難問』により第29回和辻哲郎文化賞受賞。2018年、東京大学定年退官し東京大学名誉教授となる。その後、立正大学文学部哲学科教授に着任。
著書:『論理学』東京大学出版会、1994年。『心と他者』勁草書房、1995年。『心と他者』中公文庫、2012年。『哲学の謎』講談社〈講談社現代新書〉、1996年。『論理トレーニング』産業図書〈哲学教科書シリーズ〉、1997年。『無限論の教室』講談社〈講談社現代新書〉、1998年。I『哲学・航海日誌』春秋社、1999年。『哲学・航海日誌 Ⅰ』中公文庫、2010年。『哲学・航海日誌 Ⅱ』中公文庫、2010年。『論理トレーニング101題』産業図書、2001年。『ウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」を読む』哲学書房、2002年。『ウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」を読む』ちくま学芸文庫、2006年。『同一性・変化・時間』哲学書房、2002年。『他者の声 実在の声』産業図書、2005年。『入門! 論理学』中央公論新社〈中公新書〉、2006年。『大森荘蔵-哲学の見本』講談社〈再発見日本の哲学〉、2007年。『大森荘蔵–哲学の見本』講談社学術文庫、2015年。『語りえぬものを語る』講談社、2011年。『語りえぬものを語る』講談社学術文庫、2020年。『哲学な日々−− 考えさせない時代に抗して』講談社、2015年。『心という難問−− 空間・身体・意味』講談社、2016年。『大人のための国語ゼミ』山川出版社、2017年。『論理トレーンング(産業図書)』及び一連の論理系の著作は日本の論理ブームの火付け役をした。20年以上前から論理に関する教育に多大なる貢献をしている。日本における論理トレーニングの第一人者である。
福澤一吉(明治大学法と社会科学研究所、早稲田大学名誉教授、認知神経心理学、計算論的神経科学、非形式論理学)
1982年早稲田大学文学研究科大学院修士課程(心理学)を経て、1982年、Northwestern University Ph.D.。言語病理学。1982年、東京都老人総合研究所(現地方独立法人東京都健康長寿医療センター)リハビリテーション医学部言語聴覚研究室研究員、1998年より早稲田大学文学部教授。2021年、早稲田大学名誉教授、2021年より現所属
著書:『新たな法学の基礎教育』(弘文堂、2022)『新版議論のレッスン』,NHK出版新書,2018 『看護学生が身につけた論理的に書く・読む技術』(医学書院)『論理的思考最高の教科書 ―思考を論理的にまとめる技術 誤謬に敏感になるトレーニング』,サイエンス・アイ新書,2017、『論理的に説明する技術 説得力をアップする効果的なトレーニング法とは』,サイエンス・アイ新書,2016。『論理的に読む技術:文章の中身を理解する“読解力”強化の必須スキル』サイエンス・アイ新書,2016、『文章を論理で読み解くためのクリティカル・リーディング』,NHK出版新書,2012、『言語聴覚士テキスト第2版(IV 心理学)』医歯薬出版,2011、『論理的に説明する技術』,ソフトバンククリエイティブ出版,2010、『議論のルール』,NHK出版,2010、『現代心理学入門(編集・執筆)』,川島書店,2009、『セラピー研究の方法論:量的研究、単一症例研究、質的研究』」(分担執筆),『失語症セラピーと認知リハビリテーション 第15章』,永井書店,2008、『書字動作の神経科学:書字運動の計算理論モデルからみた失書症、(分担執筆),神経文字学 第9章』,医学書院,2007『科学的に説明する技術 その仮説は本当に正しいか』,サイエンス・アイ新書,2007、『わかりあう対話10のルール』,ちくま新書,2007『論理表現のレッスン』,生活人新書,2005、『議論のレッスン』,生活人新書,2002、『脳の認知機能と失認症」(分担執筆),イメージと認知 認知科学の新展開4』岩波書店,2001、『視覚性失認―認知の障害から健常な視覚を考える』、『新版議論のレッスン』は議論する方法をToulmin Modelを背景にやさしく解説したものであり、2002年以来ロングセラーとして広く読まれている。大学で教科書としても使用してきた。本著は平成6年度に出版される国の認定国語教科書(高校)に部分掲載されている。
共訳 Martha J. Farah; Visual Agnosia 『視覚性失認』(河内十郎、福澤一吉)1996『議論の技法』(Stephen E. Toulmin; The Uses of Argument)戸田山和久、福澤一吉),東京図書,2011、
Gerald LeTendre Penn State University教授 教育社会学
Professor of Education and International Affairs, currently head of theEducational Policy Studies Department at the Pennsylvania State University andeditor of The American Journal of Education.His reserch focuses on teacherquality in international perspective.
追記
*趣意書には、日本における国語教育、特に論理トレーニング形式の教育現場調査結果を含める。*趣意書に本企画賛同企業・賛同者名を載せる予定である。早稲田の教員、法律系の教員、弁護士、企業系、教育関係者、医師等々。*本シンポジウムの結果を教科書としてまとめることを想定している。
問合せ先 福澤一吉 fukuzawa@waseda.jp