議論をする目的は多岐に渡ります。その目的の中には、合意を形成すること、一定の結論を出すこと、議論の対象をより深く理解することが含まれています。会社や国会で意思決定をする際に行われる議論では、自分の議論の優位性を相手に示し、自分の主張を最終的意思決定に反映させることはあるでしょう。しかし、自分の立場の優位性を述べることが議論の目的ではありません。そして、議論をする前に比べて、その後では、議論の参加者全員が、何らかの新しい事柄についての「知識が増えた、理解できた」という実感が持てるのが理想です。
以下の2つの反論タイプ(rebuttal, refutation)は、自分の論証と相手の論証を付き合わせて、最終的に両者にとってより質の高い結果をもたらすための議論上の技法です。自分でこれらの技法を使うかどうかはさておき、議論の構造をおさえる時の参考になります。世間では、論破という言葉をよく耳にしますが、この言葉は相手を打ち負かし、突き放すようなイメージが伴います。議論を丁寧に進めるには論破など必要はありません。議論の参加者に取って最終的により良い結果をもたらすための建設的反論をすることが大事です。
Rebuttal: Argumentation meant to overcome opposing evidence and reasoning by introducing other evidence and reasoning that will destroy its effect.
相手が提示する根拠と、結論の導出過程の問題点を指摘するために、相手とは異なる根拠と論証を示し、それによって相手の論証の効力を無効にする議論。
相手が示す根拠より有力な根拠を提示することで、自分の論証がより有効であることを示すこと。それによって相手の論証の効果のないことを示すこと。
Refutation:Argumentation meant to overcome opposing evidence and reasoning by proving that it is false and erroneous.
自分では新しい論証を展開しない。しかし、相手が提示する根拠と論証を打開するために、相手の論証が誤っていることを提示する議論。相手の論証の問題点を指摘することにより、自分の論証がより有効であることを示すこと。